片丘の自然 (長野県総合教育センター周辺の自然)

第19話 科学をする目

科学のスタートは、気づき、疑問に思う心から



 上の写真を見て、皆さんはどのようなことを考えますか?

 「樹木が泡をふいている」と考える人はいないと思いますが、「別に何も感じない(考えない)」という人もいるかもしれません。

 「モリアオガエルの卵塊じゃないの?」なんて思う人もいるでしょう。

 しかし、よく考えてみると、モリアオガエルの卵塊なら、卵からかえったオタマジャクシが落ちる池(水たまり)があるはずですが、池らしきものはどこにも見あたりません。

 「おかしいな」と思いますね。この「不思議だな」「どうしてだろう」と思うところから、科学が始まりです。

 この樹木についた泡は、そもそも当センターのM専門主事が見つけて教えてくれたものです。

 道路脇に植えられた樹木の根元に泡があるのを、通勤してきた車の中で見つけたとのことです(右写真)。

 写真を見て分かるように、暗い上にあまり目立つものではありませんから、何気なく通っていれば、見過ごしてしまうようなものです。

 そのような些細なものを見つけて話題にしたのは、M専門主事が疑問を感じる科学的な目(心)を持っていたからだと思います。

樹木の根元に付着した泡の正体

泡の正体を調べるために、一番最初に行ったのは、泡をとってきて中身を観察することでした。ていねいに内部を調べてみましたが、泡以外に見つけることはできませんでした。また、ほのかな芳香がしていました。

 さらに、泡ができていた樹木やその周辺を観察して泡の正体を考えてみます。泡ができていた樹木は、ナナカマドという植物で、右写真のように花が咲いていました。泡は、夕方になるとすっかり消えてしまい、それ以上は分かりませんでした。

 しばらく気にしながら継続観察をしていたら、次のことが分かってきました。

(1)雨が降ったあとに泡ができ、その後1日程度で消えてしまう。
(2)ナナカマドの花が咲いている時期にだけできていた。その後、この泡が観察されることはなかった。

 以上のことから、泡の正体は「ナナカマドの花が出す成分が、雨水に混ざり、枝を伝わって根元に集まる間に泡を形成した。」というふうに考えることができます。ほのかな芳香がしたことも、この説に合致します。

 このように、身近なところにも様々な不思議なものがあり、実際に調べてみることから科学的な追究がはじまっていきます。身の回りの現象を、当たり前ととらえるのではなく、「何だろう」「なぜだろう」という疑問の目で見つめてみてください。新しい発見があるかもしれません。

(専門主事 中澤美三 2007.11)

先頭に戻る